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オペラ:食べた人を幸せにするケーキ

オペラ:食べた人を幸せにするケーキ 2023.07.19

パリのダロワイヨ発祥のオペラという名前のケーキがある。スポンジ生地とガナッシュ(生チョコみたいなもの)、コーヒー風味のバタークリームが層になったケーキで、表面にはチョコレートのコーティング、金箔がアクセントに飾られている。コーヒーとチョコレートの風味、ジョコンド生地の相性が抜群で、たいそう美味しい。日本のケーキ屋さんではたまに見かけるが、そこまで定番にはなっていない。

オペラ誕生の歴史

パリの老舗ダロワイヨの歴史は17世紀まで遡る。1682年、ルイ14世に見出され、ベルサイユ宮殿に仕えていたパン職人のシャルル・ダロワイヨが、フランス革命後、1802年に創業したお店がダロワイヨだ。ケーキが有名かもしれないが、惣菜や宴会料理の提供やレストラン経営など、食のデパートとして認知されている。有名なお店で、創業から200年以上経つ今もパリで営業中の老舗だ。

そのダロワイヨで、オペラは1955年に発明される。

1949年、ダロワイヨのオーナーが、リッツホテルでパストリー職人をしていたジョゼフ・ガビヨンに代わり、オペラはそのジョゼフの息子シリアック・ガビヨンが発明したとされる。一口でケーキ丸々食べたような味わいを再現したいと、異なる風味の層を重ねた構造の画期的なケーキだ。

当時、ケーキは丸型が普通だったので、この四角いケーキはフランス洋菓子界に革命を起こしたのだそうだ。

オペラはダロワイヨの看板商品となり、世界中で愛されている。

オペラ座をイメージしたらしいが…

しかし、このオペラというケーキの成り立ちについては曖昧な部分もあるようで、ガビヨンより前に発明した人が居たが、ガビヨンが命名してダロワイヨで発表したとか、オペラ座をイメージしたとかしないとか、ネット上では色んな説が飛び交っている。

フランスのダロワイヨ公式ページにはお店の歴史のようなコンテンツは見つけられず(フランスの人は当然知っているのか、それとも興味がないのか)だった。

各国のダロワイヨ公式ページでの説明も少しづつ違うようで、日本のダロワイヨ公式サイトでは「オペラ座をイメージしてつくった」ように書いてある。ダロワイヨ誕生~オペラ発表の歴史については香港のダロワイヨ公式サイトに詳しめに載っている。

オペラという名前なので、てっきりオペラ座から聴こえてくるクラシック音楽のハーモニーを表現するために幾重にも重なった構造にして、色味だってピンク(ラズベリーなど)や黄緑(ピスタチオ)といったフランスの人たちが好みそうな発色のいい鮮やかな色ではなく黒や茶色のクラシックカラーでまとめたケーキだと思っていたのだが、どうもオペラ座の音楽からインスピレーションを得たというケーキではないらしい。

オペラの味を解説

オペラに使われているスポンジは、ビスキュイ・ジョコンド(biscuit Joconde)と呼ばれる。我々は普段スポンジとひとまとめに呼んでいるが、スポンジ生地にも種類があり、それぞれに名前がある。

ビスキュイ・ジョコンドは、アーモンドプードルがふんだんに使用された贅沢な配合、風味豊かでスポンジの中ではずっしり重たいタイプの生地だ。

この生地は、オペラの他、日本でもしばしば見かけるサンマルクというチョコクリームとミルククリームをサンドしたフランス伝統のケーキにも使われている。オペラでは、そのジョコンド生地にコーヒーシロップをたっぷりと染み込ませてある。

クリームは2種類使用されている。チョコレートと生クリーム(と洋酒)が材料のガナッシュは安定の美味しさ。

特徴的なのは、コーヒー風味のバタークリームだ。バタークリームというのは、バターを柔らかく練ったものに、ふんわりとしたイタリアンメレンゲ(通常のメレンゲより少しねっとりして艶がある)を合わせたもので、濃厚だが食感がふわっと軽い感じもする素敵なクリームだ。そこに、副材料としてコーヒーが合わせられている。

このクリームが抜群に美味しい。

コーヒー×チョコレートは本当に相性が良く、オペラにおいては、ジョコンドのアーモンド風味も合わさり、一口でなんとも贅沢な味わいに仕上がっている。それぞれの風味のバランスも絶妙だ。

コーヒー×チョコレートといえば、ティラミスだってそうだ。

スポンジ生地にコーヒーシロップを染み込ませてあり、トップにはココアパウダー(カカオだ)がトッピングされている。

ティラミスの主役といえばマスカルポーネチーズだが、コーヒー×カカオ×マスカルポーネのコラボレーションも最高だ。

パリのダロワイヨ本店でオペラを食べる

オペラのファンなので、パリへ行った際にはもちろん、ダロワイヨ本店でオペラをいただいた。嬉しかった。美味しかった。日本で食べるのと味は変わらないのだが、パリで食べるというシチュエーションにニンマリしてしまった。

ダロワイヨと言えば、大阪心斎橋にも支店があったのだが、残念ながら2018年に閉店。現在の日本の店舗は、自由が丘本店をはじめ、関東のみとなっている。日本でもダロワイヨのお菓子を頂けるので、関東にお越しの際はぜひどうぞ。

イラストは、よく行くカフェで定番商品として提供されているオペラを描いた。

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